君主論 - 新版 (中公文庫)

マキャヴェリのイタリア語は難しいそうだ。図書館で見たことがあるのだが、左ページがオリジナルのマキャヴェリの文章があり、右ページに現代イタリア語が出ている本が、イタリアで刊行されているぐらいである。つまり、『君主論』のイタリア語は、現在のイタリア人には読めないイタリア語なのだ。『君主論』の翻訳の文庫本は数種類あるが、選択の余地なく、中公版がいい。これしかない。複数の訳書があって、大同小異と思う人がいるかもしれないが、そうではない。ちなみに、何度も話す機会があった『マキャヴェッリ全集』の二人の訳者（『君主論』の訳者ではないが）からも、そういった話をうかがっている。そのひとりは、某文庫版の訳者について、「英訳を頼りに訳しているのではないか」とボロカスであった。わたしは人に『君主論』を薦めるとき、必ず「中公版で」というのだが、手に入りやすいためか岩波版で読む人もいる。おまけにその人は書評まで書いていた。ご苦労されたわけだが、読みやすさ、註の正確さ、理解のしやすさでまったく差がある。わたしは新しい池田訳が出るたびに買ってきた。『君主論』はわたしの愛読書である。アントニオ・グラムシに『現代の君主（論）』という本（ノート）がある。この本を厳密に読もうと思ったら、『君主（論）』をしっかりと読んでおく必要がある。しかし、グラムシ研究者にはそんな様子は見られない。おそらく一般の読者もそうであろう。