シャルリとは誰か?人種差別と没落する西欧 (文春新書)
Kindleストア, エマニュエル・トッド
によって エマニュエル・トッド
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『シャルリとは誰か?』で私はフランス社会の危機を分析しましたが、11月13日の出来事〔パリISテロ〕は、私の分析の正しさを悲劇的な形で証明し、結論部の悲観的な将来予測も悲しいことに正しさが立証されてしまいました。――「日本の読者へ」でトッド氏はこう述べています。本書が扱うのは2015年1月にパリで起きた『シャルリ・エブド』襲撃事件自体ではなく、事件後に行なわれた大規模デモの方です。「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモは、実は自己欺瞞的で無意識に排外主義的であることを、統計や地図を駆使して証明しています。ここで明らかにされるのは、フランス社会の危機であり、西欧先進国にも共通する危機で、欧州が内側から崩壊しつつあることに警鐘を鳴らしています。ユーロ、自由貿易、緊縮財政による格差拡大と排外主義の結びつきは、ベストセラー『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』にも通じるテーマで、前著の議論がより精緻に展開されています。
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2015年1月のパリの『シャルリ・エブド』襲撃事件後に行われた「私はシャルリ」デモに代表される「シャルリ現象」を「家族構造の人類学と宗教社会学(p.13)」を用いて批判的に分析する。著者の主張を「極端に単純化(p.7)」すると「宗教的空白+格差の拡大=外国人恐怖症(pp.7-8)」となるという。今まで日本で、階層(社会的地位や所得や教育程度)はともかく、宗教/信仰や家族構造が個々の国民の政治選択にどう影響を及ぼすか、あるいはそれが集約されて国レベルの政治をどう左右しているかなどということは考えたこともなかったので、大変刺激を受けた。もっとも「われわれは宗教を、特にそれが消えていく時期に重要視しなくてはいけない(p.50)」ということは一般論として理解できたとは言え、たとえばPISAの調査で高い成績をとるフィンランドについての「フィンランド人はあのパフォーマンスの多くをルターに負っているのであり、政府に負っている部分は少なく(pp.255-256)」というような断言はどうかなと思う。「シャルリ現象」への著者の批判は、「ヒステリーの発作(p.24)」「イスラム教徒も、申し分なく国民共同体の一部分となるために、諷刺によるムハンマドの冒瀆がフランス的アイデンティティの一部分であると認めなければならなかった。冒瀆することが義務となっていた(p.25)」というように苛烈で、本書のフランス語原典の刊行後「多くのメディアで激昂のリアクションが起こりました(p.4)」というのも十分に想像がつく。宗教実践、家族構造、階層分布、EUへの賛否、支持政党、シャルリデモの規模などをフランスの地図上に落とし込んで、その関連を読み取っていくプロセスがスリリング。部分的には、極右・国民戦線と普遍主義の結合について、「『もし人間が地球上のどこででも同じなら、そしてもしわれわれの国にやってくる外国人たちが本当に異なる振る舞い方をするのなら、彼らは人間ではないのだ』ということになる(p.194)」という「普遍主義に起こる倒錯(p.193)」の説明に「なるほど」と思う。同化主義、反EU、「共和国への回帰(p.286)」といった著者の主張が学問的な分析に混ざり込んでいる部分があり「事実と意見の区別」に苦労する。また、(学者ゆえそういうことはないだろうと思いつつも)自らの主張のために有利なデータを拾い上げているのではないかという疑念が湧いてくるところもある。あと、登場する多数の地名がチンプンカンプンなのが難点である。訳書は地図を付けてほしかった。
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